1980年代の広島県瀬戸内地方の架空の港町を舞台に、ある日突然「神様」になってしまった中学生の少女の日常を描く。「人は予想もできない大きな力を手に入れたらどうするのだろうか」という大きな問いかけの一方で、作品は少女の、ゆるやかでかわいらしい「日常」の描き込みに注力する。少女たちの日常の所作への丹念な描き込みは、例えば伊藤若冲が水辺の動植物を偏愛ともいえる筆致で執拗に描き出したような、独特な豊穣さと不思議な普遍性を帯びている。